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更新日:2026.3.22
公開日:2025.12.9
発電副産物に新たな価値を―CO2削減とリサイクルを実現するBASHFIBER®
石炭灰由来の環境配慮型高機能リサイクル繊維 「BASHFIBER®(バッシュファイバー®)」。高強度かつ環境性に優れた本繊維は、J-POWER(電源開発株式会社)の発電事業においても新たな価値をもたらすアップサイクル素材としての可能性を秘めています。J-POWERイノベーション推進部が注目するBASHFIBER®の独自性と、開発を手掛ける新日本繊維株式会社(以下、NFC)と共に目指す未来の構想について紹介します。
機能性と環境適性を兼ね備えた次代の新素材、BASHFIBER®
NFCが開発したBASHFIBER®は、火力発電所で生じる石炭灰を原料とした高強度の長繊維です。既存のガラス繊維に比べてCO2排出量が少なくリサイクルしやすいのが特長で、耐熱性や耐薬品性、耐放射線性にも優れています。さらに、放射線遮へい性を有する世界初の繊維「BASHFIBER US®(バッシュファイバーユーエス)」は、将来的には宇宙産業や医療分野、原子力産業への利用も期待できます。 2020年には、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が運用する国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」でも耐放射線性が検証されました。
石炭灰から繊維をつくる技術はこれまでも存在しましたが、短繊維と呼ばれる綿状の素材に限られていました。その点においてBASHFIBER®は、糸状の連続長繊維として世界初のプロダクトです。その特性から、ガラス繊維(ガラスを細い糸や綿状に加工した人工繊維)の代替になり得る可能性が広がっています。
ガラス繊維の原料である石灰石は、加熱時にCO2を排出します。また、一度FRP(ガラス繊維等を樹脂で固めた強化プラスチック)に加工すると分離できず、繊維だけを回収してリサイクルすることが困難です。
一方BASHFIBER®は環境適性も備えており、建築・土木や自動車といった幅広い産業分野での活用が進むことで、サステナブルな製品作りが実現すると期待されています。

環境規制の厳しい自動車部品採用が目標
BASHFIBER®の初期の活用先としては、FRPが多用されている自動車部品を想定しています。自動車ではダッシュボードやブレーキパッドなど各所にFRPが使われていますが、ヨーロッパでは特に環境規制が年々厳しくなっており、自動車部品も含めたすべての工程においてリサイクル可能な素材が求められています。製造工程でCO2排出量が少なく、融点が高いため樹脂と分離させてリサイクルできるBASHFIBER®は、有力な代替品としてアプローチできると考えられています。環境規制が厳しくなりつつある自動車市場に対して、まずはその部品としての採用を目標として、素材としての実績を積んでいくことを考えています。
自動車部品のみならずBASHFIBER®はコンクリートの強化素材としての利用価値もあります。近年CO2を吸収する環境配慮型コンクリートが注目されていますが、補強材である鉄骨を酸化させやすいという課題があります。鉄骨の代わりにBASHFIBER®を使うことで、コンクリートの耐久性向上が期待できるとされています。
またBASHFIBER®を風力発電のブレード(羽根)に活用することも考えられます。再生可能エネルギー事業を展開する当社にとって、環境適性の高い素材を活用することは、事業全体の持続可能性を高める価値のある取り組みになります。
2030年までの商用化を目指し、サンプル品向けプラントを建設中
2025年10月、茅ヶ崎の当社用地にてBASHFIBER®のサンプル品を作るプラントの稼働を開始しました。小規模なラボではなく、企業にサンプルや研究材料として提供することを想定した規模のプラントで、敷地面積は約500㎡です。2025年中にはBASHFIBER®のサンプルの製造開始を計画しています。
このプロジェクトを進めるうえで、J-POWERは土地と石炭灰の提供を行い、NFCはプラント建設・運営に関わる全般的な業務を推進しています。茅ヶ崎プラントでの年間生産量は約100tを見込んでおり、商用化の目途が立てば、2030年までに10,000t程度を生産できる新たなプラントを別途建設することを計画しています。
石炭灰を活かした新たな価値創出のかたち
石炭灰は主にセメントの原料として高いリサイクル率を誇っており、無駄になっているわけではありません。しかし現状は再利用に際し、有価で引き取っていただいているものも一部ある状況です。石炭灰がBASHFIBER®の原料になれば、石炭灰に市場価値があることを業界全体に伝えることもできます。
石炭灰を、新たな価値を創造し付加するアップサイクル素材へ。
J-POWERは新日本繊維とともに、BASHFIBER®を通じて、地球環境の負荷軽減と発電事業をはじめとする産業の持続可能性に貢献していきます。
日本繊維株式会社
資源とエネルギーをより身近にすることをビジョンに掲げた、大学連携ベンチャー企業。環境配慮型高機能リサイクル繊維であるBASHFIBER®をはじめ、現代社会で必要とされる物質材料の研究開発、宇宙開発事業にも貢献する未来物質の創生に取り組んでいる。大学連携ベンチャー企業として産官学モデルの一つのあり方を提示し、産業全体の活性化に寄与することも目指している。
https://nipponfc.com/

Company
新日本繊維株式会社

イノベーション推進部
小山 祐司
Yuuji Koyama
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