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更新日:2025.12.17

公開日:2025.12.17

現場を守る人とAIの“目”──ACESと取り組む「不安全検知AI」プロジェクト

    発電所などの作業現場における「安全性の向上」は、電力事業を手掛けるJ-POWER(電源開発株式会社)の重要課題のひとつです。J-POWERはこのテーマに対し、AIアルゴリズムに強みを持つ株式会社ACES(以下ACES)と協業し、画像処理技術を用いた「不安全検知AI」のプロジェクトを進めています。労働災害リスクに対応するためにAI技術ができることとは?取り組みの最前線を紹介します。

    安全対策をAIの力で次のステージへ

    「不安全検知AI」は、もともとJ-POWER社内の労働災害防止のために始まったプロジェクトです。

    J-POWERは主事業において発電所を複数運営していますが、それらの発電所の敷地は極めて広大です。建屋の中や高所での点検・補修作業も多く、作業員の作業状況を常に人が監視するのが難しい環境にあります。

    墜落事故に繋がりやすい開口部に安全柵を設けるといった物的な労災対策は徹底して行っています。加えて熱中症などの体調の変化や、作業への習熟度もリスク要因として捉え、対策を重ねてきました。しかし、これらの対策に万全を期してもなお、事故やその要因となる事象を完全に撲滅することはできません。

    そこで、これまで目視確認で限界があったところをAIで網羅的に確認し、リスクを洗い出して安全管理に活かすべく、ACESと共同で「不安全検知AI」のプロジェクトを始めました。作業映像をAIで処理し、不安全と検知した行動をフィードバックすることで、現場の安全性改善につなげることを目指しています。

    実証実験で確かめられた手応えと事業化への道のり

    プロジェクト開始から約5年を経た2025年8月現在、J-POWERが運用する高知県の長山発電所で実証を行っています。長山発電所は大規模な工事を実施しており、「不安全検知AI」の実証を行うのに適した環境でした。組み立て室やタービンを据え付ける箇所など、多くの作業を行う場所にカメラを設置し、「不安全検知AI」の精度を検証しています。長山発電所で成果を得られれば、別の発電所にも展開し、汎用性を確かめていくステップに移る予定です。

    このプロジェクトを進めていく過程で、「他業種の製造現場や建設現場でもAIによる労働災害防止のシステムが求められている」という感触が深まりました。現在は提供価値の検証を進めながら、事業化を見据えた方向性を定めているところです。

    労働災害防止は、J-POWERのような現場を擁する企業にとっては極めて重要度が高く、また高度な専門性が求められます。現場で働く人々が日々真摯に災害防止に取り組んでいるからこそ、「不安全検知AI」という新しい取り組みは関心を集め、多くの現場に届くと考えています。

    ACESと目指す「次世代の安全管理システム」

    AIを使った安全管理を提供するサービスは多くありますが、ACESの技術力とJ-POWERの社内ノウハウを組み合わせるからこそ実現できるサービスがあると確信しています。

    「ふらつく」や「つまづく」など、特定の動きを検知する一般的な機能に加え、複数の要因が絡み合う事故の発生状況をパターン化することで、実際の現場に即した検知システムとして提供できる可能性があると考え、共に挑戦することを決断しました。

    「不安全検知AI」プロジェクトで目指しているのは、AIが作業全体を網羅的に確認し、作業現場に潜むリスクを洗い出すことで、安心安全な現場環境を実現することです。技術的な実現性を踏まえながらシステムの実用性を向上すべく、現在は二つの機能開発に注力しています。

    一つ目は、危険範囲の自動識別です。高所や開口部といった危険を伴う場所での作業の有無や作業人数を検知する仕組みを構築しており、それらのなかで特に危険に繋がりやすい場所や行動を自動判別するモデルの開発に取り組んでいます。

    二つ目は、検知ログの有効活用です。実証中の不安全行動検知モデルの検知ログを蓄積し、その傾向を分析したり、検知結果を安全教育のサンプルとして利用するなど、検知ログの活用に向けた機能開発を進めています。

    今後は現場の安全管理に寄与する検知モデルの開発・改善を継続して行うとともに、システムの実用性を向上させることで、実際に現場で使っていただけるシステムになることを目指し、取り組みを進めていきます。そしてJ-POWERはACESと共に、より安全で効率的な現場運営を全国の製造・建設現場に広げることを目指します。

    株式会社ACES

    株式会社ACESは、東京大学松尾研発のAIスタートアップ。「アルゴリズムで、社会はもっとシンプルになる。」をビジョンに掲げ、企業の競争優位性を最大化する独自の「エキスパートAI」を開発・提供・運用し、人とAIが協働するビジネスプロセスの構築を支援している。独自開発したAIアルゴリズムをモジュール化して組みあわせ、プロセス設計から「エキスパートAI」の実装・運用まで並走するDXパートナーサービスと、「エキスパートAI」を利活用できるAIソフトウェアサービスを提供している。
    https://acesinc.co.jp/

  • イノベーション推進部

    中村 高士

    Takashi Nakamura

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