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Innovative Voice

更新日:2025.9.16

公開日:2025.7.16

「創造的な計画」で拓く未来

――地域とともに築く新しい価値創出にできること

  • ダミータグ01

社会や事業環境が大きく変化するなか、J-POWER(電源開発株式会社)は「BLUE MISSION 2050」のもと、次世代に向けた新たな挑戦に向かっています。株式会社エムテド(以下エムテド)は、その思考と実践を支える発想を提供し伴走する、クリエイティブパートナーです。
デザインマネジメントを駆使しJ-POWERの本質に迫るエムテド 代表取締役 田子 學氏に、J-POWERが持つべき視点と企業に求められる「創造的な計画」、そしてそれを具現化するアプローチについて伺います。聞き手はイノベーション推進部 井手 一久です。

「創造的な計画」を実現するためのマネジメントが求められている

井手 まずは「デザインマネジメント」という考え方について、あらためてご説明いただけますか?

田子 日本で「デザイン」というと多くの場合、意匠面や色・形といった表層的な話に終始しがちですが、本来の意味は「設計」です。私たちエムテドは、それを「創造的な計画」と定義しています。単にクリエイティブなモノを作る行為ではなく、計画性をもって社会や企業活動をパッケージ化し、相対的な価値として社会に浸透させることを重視します。このプロセスを通じて、部分的な価値を一貫性のある形で示し、次の未来を構想することを主軸としています。

このような広い意味でのデザインを実現するには、経営者や企業の上層部がデザインの仕組みを正しく理解し、経営や事業に戦略的に組み込む必要があります。それが「デザインマネジメント」であり、単なるビジュアルの最適化ではなく、企業や社会全体にデザインの考え方を適切にインストールしていく、ということです。

井手 デザインと言うとどうしても意匠的な部分に目が行きがちですよね。当社としても緻密な計画を立てることについては得意でも、そこに創造的な、クリエイティブな視点をどう付加していくか、非常にチャレンジングなことであると認識しており、田子さん率いるエムテドをクリエイティブパートナーとしてお迎えしたという経緯があります。

田子 きっかけは2019年のCEATECでしたね。J-POWER、エムテドを含む10社で、未来の暮らしを考えるコンセプト住宅「OUTPOST」を出展しました。

私たちは当時、デジタル技術が社会を激変させるなかで、暮らしや人の豊かさについての未来図を描こうと試みていました。コンセプトは「2030年のコネクテッド住宅」で、エネルギーの分散化、インフラ依存からの脱却など、オフグリッドで新たな価値観をどう実装するかという挑戦でした。

正直、J-POWERに対しては国策から生まれた「カタい」会社だというイメージを持っていたのです。しかし、日本のエネルギーを担う存在でありながら、従来のインフラの枠組みにこだわることなく、柔軟に未来に向けた構想を描こうとしていた。そこに感銘を受けました、

「OUTPOST」プロジェクト以降、未来へ向けてJ-POWERに何ができるか、アセットをどう組み直すか、一緒に考えてきましたね。

井手 「OUTPOST」から5年余りが経ち、ようやく今、構想が現実になりつつあるタイミングだと感じています。

田子 日本は技術力では世界に誇れる国です。しかし、それを社会実装につなげるプロセスが弱い。エネルギーの領域で、どのように暮らしを変え、どんなメッセージを社会へ届けていくのか。J-POWERと取り組んできた成果が少しずつ社会の中で形になり、ステークホルダーの認知や行動の変化にあらわれているのではないでしょうか。

現場から見出されるJ-POWERの本質

井手 支援をお願いするにあたり、田子さんには当社のさまざまな現場を見ていただきました。特に印象に残っていることはありますか?

田子 デザインはリサーチから始まります。私たちとしてもエネルギー企業とのお付き合いははじめてで、実際に電気がつくられる場やプロセスを、リアルに理解できてはいませんでした。

しかし、現場を見せていただくと、「J-POWERらしさ」が明確になってきました。J-POWERは火力、水力、風力、地熱といった多様なエネルギー源を扱っていて、そのポートフォリオの幅広さにまず驚きました。それらの資源を電気に変換するのは、単純な作業ではありません。現場に行くと、構造物や安全に運用する仕組みを、ものすごく時間をかけて作られていることを目の当たりにします。非常にダイナミックな営みから、私たちが普通に使っている電力が生まれていることが、肌感覚でわかったのです。

特に水力発電に関しては、日本において非常に有効な再生可能エネルギーだと再認識しました。化石燃料に頼らないサステナブルなエネルギーといえば、太陽光や風力をイメージしますが、日本においては水力が非常に有効であるということ、ダムという巨大な構造物が、治水だけでなく発電にも使われていること、それが日本の発展に寄与してきたこと、そしてその中心にJ-POWERがいたこと。この点を伝えるだけでも、大きな価値になると感じました。圧倒的な構造物や、その建設、土木の技術など、少し泥くさいところにも、価値を見いだせると思ったのです。

「BLUE MISSION 2050」に込めた未来への意思

井手 田子さんには、鬼首地熱発電所のデザインコンセプトから当社全体の経営計画まで、幅広く関わっていただいています。特に、気候変動問題への取り組みを加速する「BLUE MISSION 2050」の過程は印象に残っています。

私たちだけではどうしても、既存のマテリアルを組み合わせた総花的な計画になってしまいがちなところを、思い切ったメッセージを提案していただきました。

田子 おっしゃる通り、企業のビジョンを策定する際に現在の事業から言葉選びをすると、短期的な視野に陥りがちです。しかし企業は本来、自社の事業より先に、社会に対する役割を果たすために、生まれているはず。まさにJ-POWERは社会のため、電気に関する様々な研究、開発を行ってきたわけですから。

企業は自分たちが抱く夢や、人類に対する希望を、言葉として語るべきだと私たちは考えています。

「地球に優しい」といったごまかしの効く言葉ではなく、J-POWERはどの未来へ向かうのか、その北極星をはっきりと示してもらいたい。日本発のエネルギー会社として、それくらい堂々としてほしい。そう考えたときに「BLUE MISSION 2050」という言葉が自然と浮かびました。2050年に発電事業のCO2排出量を実質ゼロにするという大義のもとに、敢えて壮大な言葉を掲げることが必要だと思ったのです。

菅野社長(当時副社長)にプレゼンテーションを行ったとき「この言葉で本当に行けるか?」と問われたことを今でも覚えています。私は「思い切ったメッセージを掲げてこそ、市民や社会の支持、応援が得られる」と説明しました。

結果、「BLUE MISSION 2050」が採用されたときには、「潔い会社だ!」と私自身も爽快な気持ちになったことを覚えています。

井手 社員としても、大きなミッションを表す言葉のほうが、モチベーションも高まります。これまでも難しいことを成し遂げてきた会社ですから、その点でもピタリとハマったのだと思います。

予定調和の会議室から創造的な計画は生まれない

井手 ロードマップを掲げたからには、実現のためのアクションをとっていかなくてはなりません。私たちイノベーション推進部としての方向性について、アドバイスをいただけますか?

田子 デザインマネジメントが重視するのは、価値がどこに帰着していくのか、ということです。新規事業の場合は「なぜその会社がやるのか」と言っても良いかもしれません。

昨今の新規事業開発では、その会社の成り立ちや哲学に関係のない事業が生みだされることがあります。それ自体を否定するつもりはありませんが、その企業から事業がうまれる必然性やその事業が企業に与える貢献性の視点は必要と考えています。

J-POWERがスタートアップに出資したり、協業により新規事業を創出したりすることが一過性の企画ではなく、それぞれが歯車として噛み合い、エコシステム全体にどう帰着し循環するかを考えて計画すること。それこそ本当のデザインだと、私たちは考えています。

「デザインとは、橋の形を考えることではなく、向こう岸への渡り方を考えることだ」という言葉があります。一過性の事柄自体にもちろん価値はあれども、それだけしか見ていなければタイミングによって価値は失われてしまうかもしれません。しかし総合的な価値として計画され組み立てられていれば、時代を超えて価値を生んでいくはずです。

イノベーション推進部がタスクを進める中で、考える風土として「なぜJ-POWERがこの投資を行うのか」というテーマが以前から根付いているのは素晴らしいことだと思います。

井手 会社の成り立ちからしても、時代とともに変化する社会課題を解決することは、私たちの使命だと考えて取り組んできました。

一方で、スタートアップと付き合ってきた中で、テクノロジーはあっても社会実装のやり方がわからない、マーケットのニーズはあるけれど応え方がわからない、というケースは少なくないと感じるのも事実です。大企業とスタートアップが連携しただけでは解けない課題もあります。

田子 まさに、デザインの考え方が重要だと思います。テクノロジー企業が、手持ちのテクノロジーだけで社会を変えられるような時代ではありません。

料理で言えば、新鮮なマグロと良いシャリといった素材を重ねただけでは、美味しい寿司はできませんよね。現実はそう単純ではなくて、食べる人に合わせた握り方や味付けといった絶妙な匙加減があってこそ、本質的に美味しいという価値に到達することができます。

だからこそ、技術だけでなく、文脈や関係性、受け手の感情にどう響かせるかが重要です。最近注目されているCSVやサステナビリティといった、会社の価値を見える化する考え方とも深く関係しています。

井手 デザインを理解し、伝えていく「翻訳家」のような存在も必要だと感じています。

 田子 デザインでは、対話が非常に重要です。予定調和的な会議室の中で創造的な計画は生まれませんし、作り込まれた文書やプレゼンテーションだけで、一気通貫した計画を作ることもできません。

日々の実務や議論の中にあらわれる何気ない言葉や行動の中からエッセンスを見出し、形として表現していくしかないのだと、私は思います。それらを拾い集め、再評価することで、価値を帰着させる先が見えてきます。

恐れずに議論してください。その中で、エッセンスを汲み取り表現するセンスを、一人ひとりが磨いていけば、より創造的に動くことができるでしょう。まずは「BLUE MISSION 2050」をどう受け止めるのか。自分事として捉え、行動に変えていくこと。そこから文化が育っていくのだと思います。

「産業テロワール」という地域との共創概念

井出 私たちはサステナビリティと、地域社会への貢献をテーマとして、「Innovation Catalog」をスタートしました。

田子 エムテドでは「産業テロワール」という言葉、概念を提唱しています。地域の風土や歴史、地理的な特性が産業の価値に深く影響していて、産業自体が地域に根ざして生まれた理由があり、また地域に生かされている、という考え方です。企業とそこで働く人々が、地域の歴史やポテンシャルを知り、その前提に立ってこそ、自分たちの地域貢献性を理解できる。それが大きな意味を持つのです。

わかりやすいのはワインの世界です。ワインは、ともすると醸造施設があれば葡萄が作れない地域でも醸すことはできます。しかし、それが流通したときにどういう評価を得るかというと、単に美味しいワインを作ればよいというものではない。1年畑を面倒見て、かつそれを何百年も守ってきた生産地や伝統、職人のこだわりや情熱といったこその価値が、1本のワインに重なるのです。

エネルギー産業の重要なテーマである再生可能エネルギーは、まさに地域特性の上に成り立ちます。環境を破壊するような再エネのあり方に、地域への貢献性はありません。J-POWERはまさにこれから、この青い地球を守るという方向に進んでいくわけですけれども、エネルギー会社が環境の保護者として機能することは、重要な視点ではないでしょうか。

もっと言えば、これまでは地方で作った電力が大都市へ送られてきました。これからは、地域の人たちにも電気がもたらす豊かさを理解してもらったり、電気を生んでいる場所そのものの魅力を伝えたりして、都市に住む人がその地域に行きたいと思えるようなコミュニケーションのあり方も可能かと思います。

これから取り組んでいかれる地域貢献というストーリーは、産業テロワールの視点、視野に立って、J-POWERがその土地にいる理由を深く知るということがはじめの一歩なのかもしれませんね。

 井手 水力発電を考えると、昔は川をせき止めて、水を貯めて、電気をつくるというものですが、遡れば洪水対策、治水という観点で作ってきたダムもあるわけですね。治水から発電という価値に変換する際、なぜそこにそもそもダムがあるのかという理由を、発電所建設の計画段階で必ず調べています。風力発電でも、そもそも風速風向の地域特性から様々な法規制、地域の方の心情といったことをしっかり調査したうえで、計画しています。

言語化されていないだけで、前線にいる社員のなかには、地域特性に関する情報が蓄積されているはずです。どんどん引き出して表現して、ひいては地元の方にも「これが地域の価値だ」と感じていただけるコミュニケーションが必要なのだと、改めて気づきました。

田子 J-POWERは全国各地に事業所を展開しているという特徴がありますよね。地域ごとに異なる特性、日本列島の北から南に至る様々なバリエーションがあり、人々の風土や物語がある。ひとつひとつを再評価していく行為自体によって、この国の多様性や豊かさをより深く理解することができるのではないでしょうか。

人類の未来を見据えた創造的な計画が求められている

井手 イノベーション推進部のスタートアップとの取り組みも間近で見てこられた田子さんですが、印象に残るプロジェクトはありますか?

田子 小規模分散型水循環システムを開発しているWOTAは、日本における逆張りの優れたメッセージを持ったスタートアップだと感じます。日本は元々、豊かな水資源を持つ地域だと考えられていますよね。ところが高度に都市化した地域では、有事の際、水のインフラの脆弱性があらわになってきました。WOTAはそこにしっかりと向き合っています。

ふだん意識せず使えるインフラという点では、電気も同じです。水と電気、そんな当たり前の恩恵に気づかせてくれる存在が、WOTAだと思うのです。 本当の利益とは、豊かさとはなにか。長期的なビジョンの中で、地域性を伴って考えられる企業と対話を重ねることが、価値を生むのではないでしょうか。

井手 これからJ-POWERが進化していくために必要な視点はどういったものでしょうか?

田子 言葉に踊らされないことが大切です。例えばSDGsやCSVといった言葉を使わなくても――決してその言葉自体を比定しているわけではなく――おそらく私たち日本の社会には、持続的な視野が根付いていました。江戸時代の循環型社会がその好例といえるでしょう。

そもそも、企業が持続可能な社会に貢献すること、社員がそのために働いて対価を得ることは、当たり前の営みです。何も特別ではありません。J-POWERの多様なポートフォリオが、どのように社会、地域の利益として還元されているのかをひも解き、コミュニケーションを行うことでまだまだ発展する伸びしろがあると思います。ぜひ創造的な計画に取り組んでください。

井手 どうしても目の前の仕事にとらわれてしまいがちになるなかで、そういったコンフォートゾーンから抜け出すことが、おそらくは創造的な計画の第一歩となると感じています。イノベーションってなんのためにやるのか、という問いかけにも通じますね。

田子 10年20年、長いところでは100年を見据えた施設と事業に携わるエネルギー企業が持つべき視点は、次の人類のために何ができるのかを見据えたものになるはずです。堂々と、その使命に邁進していってもらいたいと思います。

  • 株式会社エムテド

    代表取締役 / アートディレクター / デザイナー

    田子 學氏

    Manabu Tago

  • イノベーション推進部 企画室

    課長

    井手 一久

    Kazuhisa Ide

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