Innovative Voice

更新日:2026.4.2
公開日:2026.4.2
電力自由化が変えたビジネスの地図——卸売から環境ソリューションへ、エネルギー企画部の挑戦
電源開発株式会社(J-POWER)のエネルギー企画部は、電力自由化に対応するために新設された部署です。かつては旧一般電気事業者への電力の卸売が主軸だったJ-POWERにおいて、現在ではコーポレートPPA(Power Purchase Agreement:電力販売契約)、再エネアグリゲーション、自社所有・他社所有の蓄電池運用など、多彩なビジネスを手掛けています。
同部署にてマネジメントを担う園田 大祐と、実務担当として最前線に立つ菅原 拓樹に、変化の荒波のなかでビジネスのゼロイチを立ち上げているエネルギービジネスの現在地を伺います。聞き手はJ-POWERイノベーション推進部の井手 一久です。
火力技術者と事務系キャリアから新たな電力ビジネスへ。
井手 お二人のご経歴を教えてください。
園田 私はJ-POWERに新卒入社で、機械職として火力部門に配属されました。まず沖縄県の石川石炭火力の現場で5年、火力エンジニアリング部(現:火力エネルギー部)で5年、その後広島県竹原のジェイペック(現:J-POWERジェネレーションサービス㈱)への出向3年という感じで異動し、この間、つまりキャリアの前半は火力発電所の運転・保守と、火力リプレースの基本計画策定などに携わりました。その後は国際事業(台湾や未投資国での事業推進・事業開発担当)、人財開発、そして現在のエネルギー企画部と、キャリアの後半はどちらかというと純粋な技術業務ではない仕事にずっと携わっています。

社内向けにはなるのですが特に伝えたいことがあります。今は火力以外の仕事に従事していますが、火力部門で身につけた電力業界や発電事業の知見、あるいはロジカルシンキングやプロジェクトマネジメントといったスキルや仕事の進め方などのフレームは現在でも活きていると感じます。
井手 ありがとうございます。菅原さんお願いします。
菅原 2013年に、事務系として入社し、最初は愛知県春日井市の中部支店に配属となりました。中部支店はJ-POWERが中部管内に保有するダムや水力発電所を統括している地点であり、その中で私は用地業務を担当しました。用地業務はかなりざっくりいうと水力発電事業を進めるにあたり、さまざまなステークホルダーの方々に、J-POWERの水力発電事業やそのために必要になる工事等の意義や影響を説明し、ご理解を頂く、そういう仕事です。そこに3年ほど在籍しました。
その後、本店の人事労務部に異動となり、新卒・経験者採用と人事制度周りをそれぞれ2年半ほど担当、5年ほど前にエネルギー計画部の企画室(現:エネルギー企画部)に異動になり現在に至ります。

エネルギー企画部で最初に所属したチームでは、主に新電力を対象とした電力の卸売や環境価値の販売を担当しました。現在のチームでは、環境価値が欲しいという方には環境価値をお渡ししたり、太陽光発電の開発はできるが発電量予測や電力取引ができないという方にはそれらの業務を代行するなど、環境価値に関わるサービスの提供を担当しています。
井手 エネルギー企画部はどういう部署で、お二人がどういったことを担当されているか教えてください。
園田 エネルギー企画部は、電力自由化後に生まれた新しいビジネス——新電力への電力の卸売や、他社と共同で行う小売、直営の小売、そしてアグリゲーションといった各種事業を実行しています。私たちが所属しているのは、事業開発室の環境価値ソリューションタスクです。事業開発室は、その名のとおり新たな事業を開発するのが使命なのですが、環境価値ソリューションタスクでは需要家に直接環境価値を販売するコーポレートPPAや、発電事業者に代わって再エネ発電所の需給管理を行う再エネアグリゲーションなどを担当しています。
井手 お二人の役割分担はいかがですか?
園田 菅原さんにはコーポレートPPAの実務担当を任せています。プロジェクトマネージャーのようなイメージで、コーポレートPPAに関する情報を全部菅原さんに集めて、まずは実務担当を中心に基本的な方針を考えて業務を進めてもらうという役割にしています。

実務の中心にいる菅原さんの方が現場をよく分かっているので、基本的にはお任せして、私は重要な部分を確認しながら必要なアドバイスを行ったり、他の部やタスクとの調整が必要な場面や、上席がいた方が、対外的に話が通りやすいときに少し支えたり、という役割ですね。仕事をしやすいように環境を整備するのがマネージャーの仕事だと意識しています。
電力自由化が開いた、ビジネスを自由に発想できる時代
井手 元々は旧一般電気事業者への電力の卸売が主な仕事だったところから、環境価値の提供やアグリゲーションへと多角化していったのはなぜでしょうか。

園田 数年前に「エネルギー産業の2050年 Utility3.0へのゲームチェンジ」(竹内純子編著、伊藤剛・岡本浩・戸田直樹著、日本経済新聞出版社、2017年)という本が話題になりました。そこで言われていたのは、脱炭素化・分散化・デジタル化・自由化・人口減少という5つのトレンドが複合的に関わりながらエネルギー業界の変革が進んでいく、ということでした。このうち、人口減少による電力需要の減少についてはデータセンター需要増などで当初の見立てからずれてきていますが、それ以外は概ねその通りに進んでいると思います。
現在電力業界で何が起きているかといいますと、多くのプレーヤーが参入し、新しい電力の商流が生まれているということです。J-POWERが「大きな発電所」を作って卸売するだけのビジネスモデルでは限界が来ていますし、従来は卸売の発電事業者という立場しかなかったものが、J-POWER自体が小売やアグリゲーターなど、さまざまなポジションを取り得る時代になっています。
例えば、J-POWERの発電所における環境価値を販売するという話をしていたら、気がついたら他社の発電所をアグリゲーションするという話に変わっていたり、それらを組み合わせると他社の発電所を我々が購入し、コーポレートPPAで需要家に売るというスキームも出てくる。電力の卸売だけではなく、あらゆるポジションを取ることができ、ビジネスを自由に発想できる時代になっているのです。
井手 イノベーション推進部でも、Utility3.0を参考にして投資領域を見ている部分があります。水の分散化のWOTAなどはその典型ですね。
今まで常識だと思っていたことを改めて問い直す
井手 これまでの事業とはかなり異なった領域でビジネスをされていると思いますが、話す相手も変わりましたか?
菅原 私は、現在の業務に携わるようになってから、電力業界に限らない、いわゆる最終需要家の方々と話す機会が増えました。環境価値を販売していくこともあって、将来に向けて脱炭素化を目指すような需要家の方々との接点が特に多くなっています。個人ではなく企業で、かつ各拠点や工場単位というよりは本社のサステナビリティ部門や、再エネ調達を取りまとめている部門の方々とお話しすることが多いです。

井手 園田さんは機械職として入社されて、今は全然違う仕事をされているわけですよね。今のお仕事をどう感じていますか?
園田 入社する時は全く、こういった仕事をするイメージじゃなかったですね。学生の時は熱力学を専攻していて、火力発電のシステムと相性がいいというか、その分野で生きていくのかなと思っていたので、大きく変わったなという感じはしています。初めは戸惑うことも有りましたが、環境変化に合わせて自分自身も常に変わっていかないといけないというのは基本的な考えとしてありますし、自身の専門性が広がっていく喜びも有りますから、今は非常に前向きに捉えています。また、目の前の業務に自分の経験を足すと自分らしさが出ると思います。例えば海外の事業者の人と火力発電の技術的な話で盛り上がったり、国際事業の様々なリスクをネタにした学生向けのグループワークを作ったりしたことも楽しかったですね。
井手 いわば畑違いの領域で、どのようにキャッチアップをしていますか?
園田 キャッチアップのために気をつけていることは、思い込みを排するということですね。「今まで常識だと思っていたことを改めて問い直す」ということです。もう少し具体的に言うと、「ルールがある」という時に、それは何のルールなのかというところを結構意識しています。法律で決まっているのか、業界慣習なのか、会社の規程なのか、それとも単なる誰かの美意識なのか、そこを選り分けることで、前提を変えられるのか変えられないのかを判断するようにしています。

井手 菅原さんはいかがですか?
菅原 事務系で入社したので仕事の幅は広いという認識はありましたが、「電源開発」という会社名のとおり、「電源(発電所)を開発するぞ!」という気持ち・イメージで入社していましたから、現在のような販売業務はあまり想像していなかったですし、電気以外のサービスを提案するということは全く想像していなかったので、そこはもちろん、イメージと違う部分でした。
意識してきたことは、「目線というか立ち位置を変える」ということでしょうか。例えば、電気は一見色がなくて差別化が難しそうに見えますよね。でも買い手の目線から見ると、安定して供給される発電方法なのか、温室効果ガスの排出が少ない発電方法なのか、建設する過程で環境に悪影響を与えないのか、など様々な視点で見ることができます。発電所を開発する立場としても気にしている部分ではありますが、それぞれの立ち位置から、様々な視点で見るということをより意識するようになりました。
ゼロからイチを立ち上げる醍醐味
井手 エネルギー企画部の仕事で「面白い!」と感じるところはどこですか?
園田 案件が成就した時はやっぱり嬉しいですし、やりがいになりますね。それと、新しいスキームを「これできるじゃん」と思いついた時は嬉しいです。コーポレートPPAやアグリゲーションは、私が異動してきた時はまだ1件も成約していなかったのですが、菅原さんをはじめチームの皆さんのおかげでどちらも実績が生まれてきました。ゼロからイチになったというのはすごく嬉しいですね。
菅原 まさに、「ゼロからイチを立ち上げる」というのが醍醐味だと思っています。「世の中にこういうニーズがあるよね」ということと、「J-POWERにはこういう能力があるけれどビジネス化できていないよね」というところをうまく見つけて、スキーム化して実現していく部分に、特に面白さを感じます。将来どうなるかわかりませんが、それがすごく大きなビジネスになるかもしれないという期待を込めながら取り組んでいます。そういう意味では、イノベーション推進部の仕事とも似ている部分があるかもしれないなと感じています。

井手 確かにそうですね。発電所を何十年もかけて建設し、その後50年間回し続けるという世界とはだいぶ違いますよね。
菅原 コーポレートPPAやアグリゲーションというのは、2016年の電力小売全面自由化以降、当時の市場になかったビジネスとして誕生しているわけです。個人でもある程度成功体験を得られるスパンで達成できる。これまでにない新しいビジネスを作るという意味ではすごくいいフィールドだと感じています。
見えはじめた「環境価値プラットフォーム」のバリュー
井手 イノベーション推進部はいろんなスタートアップと連携して新規事業を作っていますが、こういった動きについてどう感じていますか?

園田 スタートアップとの連携は会社にとって非常に重要な刺激になっていると思います。ぜひ継続してほしいですね。エネルギー企画部の立場では、既に確立されているものを組み合わせてビジネス開発するということが主な役回りなので、そこに実装できるようなスタートアップの技術はどんどん紹介してほしいと思っています。
菅原 自ら物事に関心を持って、それをビジネスとして立ち上げていくという点が、エネルギー企画部の業務と共通していると感じていて、親近感があります。実際、何名かエネルギー企画部からイノベーション推進部に異動している社員もいて、根本的に似通っている部分があると思っています。
井手 どんなスタートアップに興味がありますか?
園田 先日もイノベーション推進部と打ち合わせさせていただいたのですが、ペロブスカイト太陽電池のスタートアップ、アクティブサーフェイス社(Active Surfaces, Inc.)に出資していますよね。そのような、エネルギー企画部が推進している分野に実装できるものはどんどん連携させてもらえたらいいなと思っています。
菅原 私は、脱炭素の可視化やコンサルティングにデジタル技術で取り組んでいる会社に興味を持っています。脱炭素への取り組みは、制度が複雑だったり方針や戦略を作るのがすごく大変だったりして、各社かなり労力をかけているか、人員が足りなくて進められない状態にあります。結果としてその領域でスタートアップがすでに複数誕生していて、ある程度成熟状態になってきていると理解しています。

その会社が次どうするかを考えると、コンサルティングを行い、取り組み方針を作った、ではどうやって取り組むか、という時に「再エネ電気を購入する」「環境価値を購入する」という実行部分をさらに提供できると、より事業規模を大きくできるのではと思っています。J-POWERは再エネ電気や環境価値は提供できるけれど、脱炭素戦略をデジタルにパっと作れる能力はまだ持っていません。その領域と協働しながら、J-POWERの再エネ電気を提供するというのは非常に親和性があり、うまく連携できるのではと思っています。
井手 見える化の領域はかなり進んできて、実際に飽和状態になってきていますよね。
菅原 そうですね。みなさん次の打ち手として、じゃあ実際どうやって取り組んでいくのか、という実行の話になってくる。再エネ電気の提供ももちろんそうですが、顧客ごとにカスタマイズして、必ずしも電気の供給にこだわらない、いわゆるオープンイノベーションと言いますか、提供できる価値は何で、感じている課題は何かというのを顧客・スタートアップ企業・J-POWERで一緒に整理できるといいですよね。
井手 現在、エネルギー企画部とイノベーション推進部では「環境価値プラットフォーム」を一緒に進めています。連携の可能性はどのように感じていますか?
園田 需要家の方からも、単に非化石証書を購入するのではなく、24/7CFEのように時間単位での再エネ化を進めることは、より評価される取り組みとして関心が広がってきているのを感じます。環境価値プラットフォーム上で可視化ができるということをまず期待していますし、将来的には余っている時間帯での短期取引など、制度上・システム上の課題はあるものの、そういう方向につながれば嬉しいです。

菅原 将来的な期待でもありますが、余っている時間帯での短期取引が可能になることは、ひいては再エネへの投資増加にもつながると思っています。発電事業者としては収支見通しの観点から、「出てくる環境価値を全部買ってほしい」というのが契約上の大きな要素になっていて、一方で買い手としては必要な分だけ欲しいということで、契約協議においては議論が生じることがあります。余った環境価値を必要な人たちの中でシェアしてやり取りできるようになると、買い手側の課題感が解決され、それが投資増加につながって、脱炭素化にもつながっていく。可能性をとても感じる部分ですよね。
井手 生の声として、顧客の反応はいかがですか?
菅原 紹介したら興味を持ってもらえるという、やはり関心がある分野なんだな、ということは感じますね。いただくご要望としては、リアルタイムで見られるようになればより良いと。発電実績や需要実績がしっかりわかってからきちんと突き合わせするのはもちろん大事なのですが、需要家側から見たら「今この瞬間に何パーセントなんだっけ?」というのがリアルタイムで可視化できてくるとよりインパクトがある。今は実証フェーズですが、需要家のニーズを聞きながらスピーディーに実装していただければと思っています。
電源を開発するだけではないマインドセットへ
井手 最後に、J-POWERが掲げるBLUE MISSION 2050に向けて、これから頑張っていきたいことを一言、いただければと思います。
園田 従来の電力の卸売・発電事業に加えて、小売やアグリゲーションなどビジネスのフィールドが広がっています。会社の強みを生かしつつ、新たな事業にどんどん挑戦していきたいです。そのためにはより多くの人とつながる必要があるので、自分自身も世界を閉じずにアンテナを張り続けていきたいですし、会社全体としてもそういうマインドができてくると良いと思っています。
菅原 「電源開発」という会社名にとらわれないビジネスのマインドになっていかなければならないと思っています。電源(発電所)を開発することも大事ですが、——他のビジネスもある、開発するだけでなく販売のことも考えていかなければならない——というマインドの変化をしていきたいし、周りの皆さんにも語りかけていきたいと思います。


電源開発株式会社
エネルギー企画部 事業開発室
室長 兼 総括マネージャー(環境価値ソリューション)
園田 大祐
Daisuke Sonoda

電源開発株式会社
エネルギー企画部 事業開発室
菅原 拓樹
Hiroki Sugawara

イノベーション推進部 企画室
課長
井手 一久
Kazuhisa Ide

電源開発株式会社
エネルギー企画部 事業開発室
室長 兼 総括マネージャー(環境価値ソリューション)
園田 大祐
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