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更新日:2026.7.1

公開日:2026.7.2

GPUを「使いたい時に使える」社会へ

――AI時代の計算基盤を支えるモルゲンロットの現在地

    生成AIの急速な普及により、GPU(Graphics Processing Unit)サーバへの需要は世界規模で加速しています。一方で日本国内ではGPUサーバの絶対数、電力、通信、データの主権といった複数の制約が複雑に絡み合い、使いたい時に使いたい計算環境にアクセスすることが難しい現状にあります。

    モルゲンロット株式会社は、GPUサーバを効率的に運用するためのソフトウェアと、そのGPUリソースを取引するプラットフォームを提供し、エンドユーザーとデータセンター事業者の双方を支える計算インフラ企業です。J-POWER(電源開発株式会社)は同社に出資を行うとともに、計算時の使用電力と再エネ発電電力の時間単位マッチングという観点でモルゲンロットとの対話を重ねています。

    本稿では、モルゲンロット株式会社 代表取締役CEOの中村昌道氏に、AI時代における計算基盤の最新状況と、計算力と電力の関係性について伺います。聞き手は、J-POWERの井手 一久です。

    AI時代に求められる、GPU運用と取引のプラットフォーム

    井手 モルゲンロットの事業内容についてお聞かせください。

    中村氏 当社はGraphics Processing Unit(GPU)を効率的に運用するためのツールと、そのGPUリソースを取引するためのプラットフォームを提供しています。GPUリソースを提供したい方が、管理・制御するツールを導入したうえで、GPUリソースを使いたいユーザーがプラットフォーム上から必要な時に必要な分だけGPUリソースを使える、というビジネスを推進しています。

    井手 2019年の創業からこれまで、事業の力点はどのように移ってきたのでしょうか。

    中村氏 創業当初、GPUが使われていたのはいわゆる「メタバース」と呼ばれている領域のレンダリング用途でした。創業して2〜3年のタイミングで、ChatGPTを皮切りに生成AIが急速に立ち上がったことを契機に、AI用途に事業を大きく転換しました。特にこの1年にかけてAIのご要望が非常に増えており、さまざまな形での問い合わせをいただいています。

    井手 モルゲンロットが掲げるミッション、ビジョンを教えてください。

    中村氏 当社のミッションとして「必要な時に必要な分だけ計算力にアクセスできる世界を実現する」を掲げています。その結果として、ビジョンは「あらゆる理想を計算力で実現し、人々の生活をより良いものにする」ことを目指しています。

    GPUサーバは使いこなすことが難しく、AIにおいて有効であるにもかかわらず、うまく使えないという事態が起こりがちです。そうならないように、お客様が実際に「使うことができる」形で提供することに私たちは注力しています。

    井手 これまでの代表的な実績や事例があれば教えてください。

    中村氏 技術力という観点では、JAXA(宇宙航空研究開発機構)との共同研究が大きいと思います。JAXAのスーパーコンピュータをいかに効率的に管理するか、ここ2年ほど一緒に取り組んでおり、そこで得た知見がモルゲンロットの製品に反映されています。

    例えば、特定のユーザーがストレージサーバへ大量にデータを書き出していると、他のユーザーの書き出し処理が待たされる。GPUサーバやCPUサーバは10%しか使われていないのにずっと待っているという事態が起きます。なぜそうなるのかを分析し、書き出し用の通信帯域をそのユーザー専用に確保するなどの運用改善を支援するわけです。GPUの稼働率が高いように見えてもアイドリングしているだけというケースは少なくない。非常に高額な機器ですから、もったいない事態をなくしていかなければなりません。

    通信とセキュアな運用という観点では、三菱商事およびNTTコミュニケーションズ他5社共同で取り組んだ湘南アイパークの実証実験があります。製薬会社同士は競合関係にあり、その方々が1台のサーバを分け合うときにデータをどう保全するか、外部に公開できない薬の設計図に相当するデータを大量に扱うときにどんなデータの取り扱いを設計するか、というところに力を入れました。NTTコミュニケーションズのコンフィデンシャル・コンピューティングと組み合わせるなど、多様な「セキュアさ」を提供しています。

    クラウドの利点と、AI時代のデータ主権

    井手 AIが日常化し、ユーザーがAIと対話することは当たり前になりつつあります。一方で「それがどのサーバにあるのか」という解像度は低いですよね。サーバ側ではどんな工夫が求められているのでしょうか。

    中村氏 工夫しなければいけないことは多岐にわたります。サーバの設定ひとつとっても、「ユーザーがきちんと使える状態」にしなければなりません。

    AIによる需要の高まりに比例し、GPUサーバは非常に高額になっています。CPUサーバなら1台400万円で買えるようなものが、GPUサーバでは1億円になる。最近では25倍ほどの価格差です。このような状況下でGPUサーバを共有する手段として、サーバ側を気にせずスケーラブルに使え、必要な時に拡張できるという点でクラウドサービスは非常に有力な選択肢でした。

    ところがAIの活用が進むにつれて、AIモデルを学習させる際のデータを誰にどう使われるのか管理したいという要望が強まり、クラウドの当初の設計とは真逆の要請、「クラウドの裏側(サーバ側)を気にしなければいけない」という課題が生まれています。重要なのはその改善方法で、モルゲンロットとしては、お客様の要望に応じてセキュアな状態でAIが使える環境を提供することに注力しています。

    井手 特に日本のユーザーにおいて、データセンターのロケーションを気にされる傾向は高いですか?

    中村氏 当社のお客様は製造業が多く、その傾向は一層強いと思います。理由として、日本の場合、AIを使用する側の企業が多いということが挙げられます。比較して北米のGPUユーザーはAI関連のサービス事業者が中心です。

    日本のGPUユーザー企業は様々な理由で、データを「自分たちが把握している場所」に保全しなければいけません。例えばCPUのクラウドサービスを使うにあたっても、「この設計図面は輸出管理規制法の観点からこの場所で取り扱わないといけない」といった制約があります。AIになるとその要請はさらに重要になり、日本のお客様は日本のローカルロケーション、あるいは海外でもそのロケーションがどうなっているかを非常に気にされる方が多いですね。

    プラットフォームと運用ツール、2つの提供形態

    井手 ユーザーのニーズに対して、モルゲンロットのサービスはどのようにマッチしているのでしょうか。

    中村氏 端的に言うと、エンドユーザーがそうした要望を持った時に、使いたいサーバを選びに行けるプラットフォームを提供している、という点が大きいと思います。

    例えば製造業の方が日本リージョンのGPUサーバを使いたいといった場合、まず頭に浮かぶのはAWS、Azure、GCPの日本リージョンでしょう。残念ながら、いわゆるGAFAといった企業が日本国内にて潤沢なGPUサーバを保有はしていませんから、その時点で選択肢がかなり限られます。日本リージョンのGPUサーバは台数が少ないため、非常に高額で、オンデマンドインスタンスもほとんどなく、1年間や数ヶ月の占有契約が必要とされます。使い勝手が悪いというのが実情です。

    次にさくらインターネットさんなど日本のクラウドサービスプロバイダーが頭に浮かぶと思いますが、日本のプロバイダーですらサーバ台数が足りなくなってきています。さらにその先には、本当にローカルなクラウドサービスプロバイダーやGPUサーバの保有者がいるのですが、そこまでユーザーが個別に声をかけることは難しい。そんな時にモルゲンロットのプラットフォームを一度見に来ていただければ、何かしらの答えが出せる。これがお客様に対して有効だと考えています。

    井手 Web上のプラットフォームで、必要な計算力と利用時間帯をピックアップしてデザインできる、という理解でよいですか?

    中村氏 その通りです。GPUサーバの使い方も最近は多様化しています。AIモデルの学習はもちろん、それを実際に使う推論というオペレーションへ急速に移行しています。例えば学習用に10〜20台のGPUサーバが2ヶ月だけ必要、その後は学習したモデルを推論用途で運用するためにGPUサーバが5台必要といった切り替えを、Webから柔軟に行っていただけるのが特徴です。

    井手 ユーザー向けのプラットフォームを運用しながら、GPUサーバを保有するデータセンター事業者向けにもサービスを提供されていますね。

    中村氏 いかにデータセンターを効率的に運用するかというツールをデータセンター事業者向けに販売しています。例えば、GPUサーバを使ってクラウドサービスプロバイダーになろうと考えているお客様には、GPUサーバはどう管理されるべきかというソフトウェアを提供します。それがビジネスを加速させる道具になる一方で、そのお客様がクラウドサービスプロバイダー事業とは別にGPUサーバを拠出したい場合、当社のプラットフォームを選んでいただくといったケースもあります。

    井手 1台のサーバを複数の企業で分け合うようなことも、設計上は想定されていますね。

    中村氏 いわゆる「マルチテナント」という、1台のサーバに複数の会社が入ってもお互いセキュアに使える仕組みを目指しています。特にGPUサーバはサーバ同士の通信が性能を左右するので、その性能を担保したまま、複数の事業者にセキュアに渡せることが、当社の持っている技術としては重要な部分です。

    井手 モルゲンロットの技術的な強みを教えてください。

    中村氏 俗にいう仮想化技術とオーケストレーションです。モルゲンロットはもともとHigh Performance Computing(HPC)向けにそうした技術を開発・適用していた経緯があり、GPUサーバにも類似の技術を使うことができます。この点は、他社にはない優位性だと考えています。

    データセンター設置の最適解は?

    井手 マクロな話に移りますが、国内の計算リソースは今も足りていない、これからもっと足りなくなる、という認識でしょうか。

    中村氏 「日本のデータセンターが足りない」という議論の中には、海外の事業者が日本のデータセンターを使いたいという側面も含まれています。AI活用はセキュリティ面が解決されないと日本企業での導入はなかなか進みませんが、海外企業は先んじてAIを投入しており、そうしたプレイヤーがすでに日本のデータセンターに対して多くの要望を持っている。

    ただ、当社が相対しているお客様の状況を見ると、1〜2年後には日本の事業者でも非常に多くのサーバが必要になってきます。このバランスを取りながらビジネスを推進することが重要だと考えています。

    井手 海外事業者が日本リージョンを使いたいというのは、どういう意図があるのでしょうか?

    中村氏 単純に、GPUサーバを設置するための電力などが、自国で足りていないケースが多い。特に韓国やシンガポールのように国土面積が小さく、一方でAI利用が活発な国の場合、自国にデータセンターを建てるのが難しく、日本のデータセンターや日本のGPUサーバでAIを動かしたいという要望が増えているんです。

    井手 日本国内のデータセンター供給という観点では、どんな課題があるとお考えですか。

    中村氏 電力と通信、いわゆる「ワット・ビット連携」と呼ばれているような領域での課題です。例えば中部地方にデータセンターがあっても、通信の管理がきちんとできていないと、一度東京の通信拠点を経由してから戻ってくる、ということが起きかねない。物理的にすぐ近くにあるのに、通信は東京を迂回するわけです。

    海外のデータセンター事業者は、特に海底ケーブルの陸揚げ地点や、その混雑状況を非常に気にします。その観点で、九州の福岡や北海道の苫小牧といった新しい立地が注目されていますが、今度はそこに電気があるかというと、「ない」というのが実情です。電力と通信の両方が揃った立地を探すのは、実は非常に難しい。

    アメリカであれば原子力発電所を新たに建設するといった選択肢もありますが、日本の事情を考えるとそれも難しい。電気をゼロから生み出せないとなると、立地のマッチングが極めて重要になります。

    井手 一つのデータセンターで消費する電力量も急激に増えていますね。

    中村氏 GPUサーバの消費電力は非常に大きくなっています。シンガポール最大のプロジェクトとされているケースは30メガワットくらいの規模で、シンガポール国内には作れないのでマレーシア側に作っているような状況もあります。1社で数メガワット級の電力を使う案件が当たり前になり、100メガワットを超える大型案件も増えています。電力の分配と高速な通信のコネクティビティをどこまで担保できるかが、非常に重要になります。

    井手 太陽光発電は昼間しか発電できませんから、「30メガワットのデータセンターに30メガワットのパネルを置けばよい」という単純な話にはなりませんよね。

    中村氏 その通りです。日本の事情では蓄電池との組み合わせが非常に重要になります。過去、中国のように大規模なダムがある国では水力発電ベースで安定した電力が供給され、水力発電ベースのデータセンターが多く建てられました。日本にはそこまで大きなダムはないので、何らかの形で電力を確保しておかねばなりません。

    井手 適切な規模感の目安をどう考えていますか?

    中村氏 まさに当社の目指すプラットフォームの重要な要素でして、最適な大きさのデータセンターとは何かを常に問いとして持っています。アメリカのように数百メガワット単位で発電所とセットで建設するのは、日本では難しい。例えば各地に2メガワット規模のデータセンターを電気とセットで設置していくというのが望ましいのでは、という仮説を持っています。規模が小さすぎると付帯設備のコストが回収できませんし、再エネ前提なら蓄電池とは切り離せませんが、例えばサーバ5台のために蓄電池を置いても採算が合いません。サーバが100台規模になれば蓄電池もある程度置けるようになる。付帯設備と利用者のバランスが、2メガワット程度にあるのではないか。そういう発想で、各地に分散してデータセンターを建てていくことを構想しています。

    井手 一方で、すぐに使いたいというニーズにはどう応えていますか?

    中村氏 今すぐにGPUサーバを使いたいというお客様には、コンテナ型データセンターをご提案するケースがあり、実際に何件も実行しています。データセンターを使おうにも電力が足りずに空きがないという状況で、それでもGPUサーバは使わなければいけない。そういったニーズに対して、コンテナ型のデータセンターを物流倉庫の敷地内に設置するなど、スポット的にお客様の需要を満たすリソースの提供方法として有効ですね。

    グリーン電力と計算機の「時間取引市場」へ

    井手 電力需要が増え続ける中で、その電力がグリーンであるべきかどうかについてはどう考えていますか?

    中村氏 モルゲンロットとしては、いろいろなリソースの電力を効率的に使うことが重要だと考えています。世の中の流れはグリーンに振れていますね。

    例えば製造業のお客様の事例ですと、これまではモノを作ったときに、それに応じて発生した二酸化炭素排出量を申告すればよかった。ところが最近あまりにもGPU側の消費電力が大きいので「何らかのソフトウェアを開発したときに、その二酸化炭素排出量も申告しなければいけない」というケースが急増しているというのです。

    その場合、GPUサーバが再生可能エネルギーで動いていたのかが問われます。証書という観点で対応されていますが、先進的なユーザーは、証書ではなく「本当にどれくらいグリーン電力で動いたか」を武器にしようと考えはじめています。この流れは加速している印象ですね。

    井手 現在、J-POWERでは再生可能エネルギーに時間的価値を付与する「環境価値プラットフォーム」の開発を進めています。発電量を時間ごとに記録するプラットフォームと、モルゲンロットの計算機プラットフォームを組み合わせる可能性についても、対話を重ねていますね。

    中村氏 当社のプラットフォームが目指す少し先の姿は、計算機の能力を取引する市場を作ることだと考えています。そこでまさにマッチングが重要になります。

    電力に関してはすでに取引市場が形成され、JEPXなどで簡単に取引されています。計算機についても同様のマッチングは必要ですし、その中で電力取引市場との連携は極めて重要です。急ぎでないものは安価でゆっくりできる。急ぐ必要があるものは高額で。再エネであればその価値が証明された電力として計算機の取引市場に供給され、計算機が動作する。そういった取引が自動で行われる状態が望ましい。

    その観点で、時間単位での電力の消費・発電の監視やマッチングと、当社の「時間単位での計算力の提供」を合わせる方向で検討しています。

    井手 J-POWERとの関わりについてどう感じていますか?

    中村氏 第一に発電会社として、電力供給における非常に重要なパートナーだと感じています。当社にも数百メガワット単位のご相談が来ることがありますが、単独でさばける案件ではありません。J-POWERとはパートナーとして今後も連携を強化したいですし、その先の「時間単位のマッチング」など、モルゲンロットだけでは難しい要素を一緒に取り組んでいきたいです。

    必要な時に必要な分だけアクセスできる計算力を

    井手 中村さんご自身のバックグラウンドを教えてもらえますか?

    中村氏 学生時代は航空宇宙工学を専攻し、流体シミュレーション、空気の流れの高度化を研究していました。卒業後は日立製作所で機械系製品に関わる流体シミュレーションに従事し、シミュレーション技術そのものの開発と製品開発の両方を担当する研究開発エンジニアを務めていました。GPUサーバを使って計算を高速化したり、AIを用いて、シミュレーションをしなくても性能を推定したりできるようにする技術に取り組む過程で感じたのが「GPUサーバをいかにうまく使うか」ということ。GPUサーバのユーザー側から、「いかにうまく提供するか」という観点で事業をやりたいと思ったのがきっかけです。

    井手 モルゲンロットも、創業から事業形態が大きく変わってきましたね。

    中村氏 創業当初はレンダリング製品を開発しており、レンダリングからAIへピボットのタイミングで、私がChief Technology Officer(CTO)として参画しました。その後、AI需要の高まりの中で北米と日本にて事業を展開し、私が日本を見ています。技術寄りのスタートアップになってきた、というのが今の姿です。シミュレーションのユーザーとしての経験は、お客様にとって一番いい使い方をご提案するうえで、強みになっていると感じますね。

    井手 事業展開のシナリオはどう描いていますか?

    中村氏 より推論側の基盤を強化していきます。現在当社ではAIモデルの学習と運用フェーズの推論のどちらにも対応できる製品を提供していますが、推論ユーザーの使い方は日々進化していて、そこに追いついていく必要があります。

    特に大きいのは、Agentic AIとPhysical AIです。これらを日本リージョンの中に環境として作らなければいけないユーザーが、本当にたくさんいらっしゃいます。

    井手 学習と推論では、求められる基盤がどう違うのでしょうか。

    中村氏 機器や設定からして、最適なものを提供するという意味では全く違うものを作らなければなりません。学習は、AIモデルに自分たちのデータを入れて強化する処理です。その裏側で数学的な処理が行われます。今はNVIDIAのGPUサーバが非常に強力なツールになっていて、NVIDIAのGPUを使って学習することが基準になっています。

    一方、推論は学習と違って、軽い処理を何度も実行することが必要です。極論すると、NVIDIAのGPUサーバでなくてもよい選択肢が出てきます。今は非常に多くの会社が新しいGPUという形で事業を展開しており、Groqのように推論に特化したアーキテクチャも存在します。NVIDIA自身も、提携している推論用GPU(LPU)を推奨し始めている状況です。

    「学習用と推論用のサーバを分けて運用すべき」というのが大きな潮流ですが、そうなると本当に難しいシステムをユーザー側で組まなければいけない。クラウドサービスにも頼り切れない。その領域をモルゲンロットが支援できればと考えています。

    井手 推論には通信の遅延、いわゆるレイテンシも重要ですよね。

    中村氏 推論は「何ミリ秒で回答してくれるか」が非常に重要で、レイテンシが鍵になります。ただし推論の中にも、本当のリアルタイムフィードバックが必要なものと、ある程度待ってよいものがあります。例えばスライド資料を作るAIは、1ミリ秒以内に返答が必要な種類のものではなく、指示を出してから10分、30分待つことも許される範囲です。推論の中にもリアルタイム性が必要なものとそうでないものがあるので、用途に応じた最適化が求められますね。

    井手 企業がAIを本格活用していくと、AIに払うコストも今後上がっていくのでしょうか?

    中村氏 AIとコストは深刻な課題になりつつあります。北米ではいかに安くトークンを処理するか、AIを使うかという問いに、相当な数の企業が取り組んでいます。ユーザー側で考えなければいけないことが確実に増えている現状において、当社はその基盤を提供する事業をしていますが、加えてコンサルティング的な機能や、コンサル会社との連携も視野に入れています。

    井手 今後、日本にとってPhysical AIは特に重要になりそうですね。

    中村氏 日本は製造業の多い国ですから、Physical AIが非常に大きな市場になるでしょう。工場の中にGPUサーバがあって、そこに基盤を構築する。ただし、もともと学習に使う基盤は別のデータセンターにある。その一連の運用までの流れをサポートするプロダクトを、モルゲンロットでは強化して作っているところです。学習から推論へ、研究室から現場へ、計算機の使われ方は確実に広がっていきます。「使いたい時に使いたい計算環境にアクセスできる」社会の実現に向けて、当社は引き続き、基盤とプラットフォームの両面から取り組んでいきます。

  • モルゲンロット株式会社

    代表取締役CEO

    中村 昌道 氏

    Masamichi Nakamura

  • 経営企画部 兼 イノベーション推進部

    井手 一久

    Kazuhisa Ide

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