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Innovative Voice

更新日:2026.7.9

公開日:2026.7.7

遊休地のアップサイクルで未来へ繋ぐ

――エリアノが描く「動かせる建築」とオフグリッドの可能性

    J-POWER(電源開発株式会社)と株式会社エリアノは、地域活性化とエネルギーの知見を融合させた、新しいインフラビジネスの形を模索してきました。現在、高機能トレーラーハウスのレンタル事業を共同で展開するほか、既存インフラに依存しないオフグリッド空間の実装にも取り組んでいます。
    建物の建設が制限された「遊休地」をどのように蘇らせ、地域へと繋いでいくのか。神奈川県横須賀市「ソレイユの丘」——エリアノが最初に納品したトレーラーハウスが置かれるキャンプサイトにて、エリアノ代表取締役CEOの武田 晃直氏に、創業から今日に至る歩みとこれから見据える未来を伺います。聞き手はJ-POWER経営企画部兼イノベーション推進部の井手 一久です。

    「動かせる建築」との出会いから始まった

    井手 この「ソレイユの丘」は、エリアノ創業後、最初に納品したトレーラーハウスが置かれているキャンプサイトですね。武田さん、まずエリアノを創業されたきっかけから教えていただけますか。

    武田氏 エリアノは勝呂と鳥海、そして私の3人で共同起業した会社です。私以外の2名は一級建築士として、大規模なビルの設計で活躍してきました。少子高齢化が進むこれからの時代、大きな建築物ばかりではなく、自然に優しくフレキシブルに動く建築物はつくれないかという問いを起点に、トレーラーハウスに出会い、起業するきっかけとなりました。

    井手 「移動できる建築」というテーマは興味深いですね。

    武田氏 実際に取り組みをはじめてから創業の本質的な意義が見えてきました。日本の国土のおよそ7〜8割は、建築物が建てられない場所なんです。しかしそういった場所こそ素晴らしい景観が広がっていて、活性化できるポテンシャルがあります。実際に現地に足を運びその光景を目の当たりにして、建築物ではなく、動かすことのできる車両である、トレーラーハウスの必要性を強く感じるようになりました。

    井手 現在、エリアノのトレーラーハウスは全国で何台ほど設置されていますか?

    武田氏 販売したトレーラーハウスと、エリアノが所有して地域の方と宿泊事業を一緒に運営しているトレーラーハウスを合わせると、百数十台というところまで来ていますね。(※収録当時)

    創業直後にコロナ禍。ハードシングスを乗り越えて

    井手 トレーラーハウスを接点にして、地域に新しい産業や取り組みが生まれることを期待されているかと思います。具体的な事例があれば教えてください。

    武田氏 2024年度、新潟県佐渡市にある、廃校を活用した宿泊施設をつくりました。佐渡市と連携して内閣府に申請して採択された補助金・交付金と、地元企業の投資を組み合わせて、トレーラーハウスを設置したんです。

    宿泊施設という目的からスタートしましたが、最終的に国へ提出したKPIは「佐渡市に多くの企業を誘致すること」と「5年以内に佐渡発の新規事業を2つ生み出すこと」にまで広がりました。

    それ以外にも、霧島国立公園内で通常建設物を建てられない立地にトレーラーハウスを設置して宿泊施設としたり、愛媛県の大三島の宿泊事業者さんと連携して企業合宿に活用できる設備を用意したりといった取り組みを、全国各地で展開しています。

    井手 創業当初からこれまで、武田さんは事業の舵取りをされてきて、変化を受け入れつつサービスを拡げてきたわけですが、大変だったことも多かったのではないでしょうか?

    武田氏 実は、一番大変だったのは創業期だったんです。創業し、活動を始めたすぐのタイミングである2020年2月に、コロナ禍に見舞われてしまいました。当時、ある企業から億単位の出資を受ける直前まで話が進んでいたのですが、コロナ禍による情勢変化を理由に取り下げになってしまって。すでにここ「ソレイユの丘」のプロジェクトが動いていて、創業メンバーと外注メンバーへの人件費も発生している中でお金がないという状況が、一番しんどかったですね。

    井手 なかなかのハードシングスですね。どうやって乗り越えたのですか?

    武田氏 ありがたいことに、多くの方からのご紹介に助けられました。人づて、企業伝手でつながった大阪の不動産会社さんが、この「ソレイユの丘」プロジェクトへの投資を決めてくださったんです。それが決まる頃にはもう運転資金が枯渇しそうな状態でしたから、過去のお客様がエンジェル投資として運転資金を入れてくださって、なんとか乗り切ることができました。

    全国1,700自治体、そして世界の遊休地へ

    井手 未来に目を向けて、これからどのような成長を考えていますか?

    武田氏 エリアノの事業は3つあります。トレーラーハウスを販売する事業、J-POWERと一緒に展開しているレンタル事業、そして宿泊施設を自社や投資家の方に所有していただき、レベニューシェアで運営していく事業というものです。

    事業展開に即して、ミッションも変わりました。遊休地をテーマとして、これら3つの事業を伸ばしたいと思っています。具体的には、全国1,700以上ある自治体すべてに、レベニューシェア事業のトレーラーハウスを設置していきたい。そのために各金融機関と業務連携を広げながら、地域企業とのつながりを拡大し、それぞれの点を線にし、面にしていくことを考えています。宿泊事業にとどまらず、将来はデジタル住民票の発行といった自治体連携まで展開していきたいです。

    販売事業についても、自治体向けに災害用トイレトレーラーを企画品として提案したところ引き合いが強いです。今後はプロダクトをパターン化して、ニーズに合わせたものを大量に生産、販売していくことにも取り組んでいきます。

    井手 5年先、10年先のイメージはありますか?

    武田氏 5年で今の方向性の50〜60%達成を目指しながら、10年後を見据えると、日本国内の遊休地だけでなく、世界の遊休地に向けた展開を念頭に置いています。また、現在戦争が起きているウクライナや中東などで家を失った方々に「Japaneseブランド」のトレーラーハウスを発信していきます。販売面では、トレーラーハウスの本場であるアメリカでJapaneseブランドのトレーラーハウスを広めていく、ということを目指しています。

    インフラに縛られない「オフグリッド空間」をつくる

    井手 J-POWERがエリアノに出資する経緯を振り返ってみたいと思います。

    武田氏 井手さんとお会いしたのは2〜3年前でしょうか。当時、愛媛県大三島にある「WAKKA」という宿泊事業者さんと一緒に、企業や団体といった法人グループでの利用を促進する取り組みを行っていて、「WAKKA」の隣にある、建物が建てにくい土地にトレーラーハウスを設置するプロジェクトを進めていました。その過程で井手さんとお会いし、そのプロジェクトにJ-POWERとして参画してもらえました。一緒に深くやるのであれば、もっといろんな事業を展開できるのではないかという理由から、出資いただいたと記憶しています。

    井手 当時から、電気や水道といったインフラからオフグリッドな環境をつくりたいというお話もしていましたね。なかなか難しい部分もありましたが、今また新たに、オフグリッド空間をつくるプロジェクトを両社で進めています。

    武田氏 トレーラーハウスを本来置きたい場所というのはインフラが整っていないところが非常に多いのです。トレーラーハウスをオフグリッド化することで、そういった場所でも快適な体験を提供することができるようになります。加えて、災害が多い日本において、防災や災害時対応の観点からも既存インフラに依存しない技術、環境を実装することで、社会に対するより大きなインパクトが出せると思っています。

    大規模施設・中期利用——共同事業で見えた新需要

    井手 エリアノとJ-POWERでは、共同でレンタルトレーラーハウスのレンタル事業をスタートしています。エリアノとして、どのような課題がありましたか?

    武田氏 トレーラーハウスの存在自体が、まだ社会に広く認知されていないということです。自治体や企業がトレーラーハウスを検討される時に、「1年間だけ試しにまず使ってみたい」というご要望だったり、「イベントで3〜4日だけ使いたい」というニーズだったりをたくさんいただいていたんです。しかし、これまでエリアノのビジネスはトレーラーハウスの販売や、共同運営を前提に設置することを行ってきていましたので、短期から中期の貸し出し用のトレーラーハウス、いわゆるアセットを自分たちの資金力だけで保有することができなかった。それをなんとかしたいというのが、ずっと抱えていた課題でした。

    井手 2社共同事業の企画から開発までを一緒にやってきて、手応えと課題をどう感じていますか。

    武田氏 私たちの想定以上に、様々なニーズがあることがわかりました。興味深かったのは、屋外イベントでの控え室やショップを想定していたのですが、東京ビッグサイトや幕張メッセの施設内施設としてトレーラーハウスが活用できるという、新たな発見があったことです。そういった大規模施設においても、個室や接遇スペースが足りていないケースがよくあると理解しました。全国にある類似施設へのサービス提供も可能かと思います。

    また、数日間の超短期に加えて「1〜2年借りたい」という中期的なご要望も増えてきました。例えば現在建築申請中で1年後には自前の施設が建つのだけど、その間そのスペースを有効活用したいというニーズです。これはチャンスだと思っています。

    「地域を良くする」という共通言語で積み上げる

    井手 J-POWERと共同で事業開発を行うことでメリットはありましたか?

    武田氏 まず、エリアノが持ち合わせていないネットワーク先に、営業やプロモーション活動ができ、想定していなかったお客様と出会うことができました。また、J-POWERのエネルギーに対する知見や経験を活用し、オフグリッドのレンタルトレーラーの開発が着々と進んでいます。これはエリアノ単独では成し遂げるのは難しかったと思います。

    井手 エリアノが持つ地域のコネクションと機動力は、J-POWERにはない強みですよね。「地域をどうやって良くしていくか」という共通言語の下で、一緒にどんどん積み上げていければと思っています。本日はありがとうございました。

    ▶ [Part2:スタートアップが価値を生み、事業会社が社会に届ける――2人の一級建築士が語る、両輪の設計図]


    株式会社エリアノ https://areano.jp/

    電源開発株式会社(J-POWER)イノベーション推進部 https://innovation-catalog.jpower.co.jp/

  • 株式会社エリアノ

    代表取締役 CEO

    武田 晃直 氏

    Akinao Takeda

  • 経営企画部 兼 イノベーション推進部

    井手 一久

    Kazuhisa Ide

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